2013年6月4日火曜日

Preachingについて

前回の更新からかなり時間が経過してしまいましたが、4月に忙しい冬学期が終わってから、5月にバンクーバーで長男が生まれ、出産準備から手続きなどでバタバタする毎日が続きました。最近やっと落ち着いてきたので、冬学期に学んだことをまとめていきたいと思います。

リージェント2年目の冬学期はPreaching&Worshipコースを履修しました。この授業は毎週3時間の講義と1時間半の説教演習がセットになっていて、学生は2回の説教を演習の中で経験することになります。コースの教官はRoss Hastings教授で、自身2,000人規模の教会の主任牧師としての経験と説教についてのフレームワークをを共有してくださいました。さらにリージェントの先生方がゲストスピーカーとなり、各書簡をどのように釈義し、説教するか学ぶことができるのが特徴です。テキストはJames S. Stewartの「Heralds of God」とDarrell W. Johnsonの「The Glory of Preaching」を読み、ブックレポートにまとめました。
 
講義では初めに説教についてのフレームワークを学びましたが、一番印象に残ったのは「Memory Retantion Hierarchy(記憶維持の階層)」についての説明でした。聴衆(メッセージを聞く)側の立場に立つと、話し方のパターンに応じた記憶への残り方に順序があり、説教のストラクチャー(構造)は主題となるメッセージをいかに伝え、聴衆の記憶に残るように配慮することが求められることになります。

ちなみにその順番ですが、
(1)Ethos(主題)
(2)Concluding illustration(結論の例話)
(3)Introductory illustration(導入の例話)
(4)Main Point Illustration(主題の例話)
(5)Application(適用)
(6)Telling Phrase(効果的な文句)
(7)Explanations(説明)
となっています。

一番最後に「説明部」が来ているのが興味深く、説教者としては聖書のみことばを釈義に基づき、どのように説明するか、適用するかに注目しがちだと思いますが、この階層によると、聴衆の記憶に残るのは説明部よりも例話であることが分かります。そして、説教としての基本的な構造(ストラクチャー)はこの階層を踏まえた流れで作りこむことになります。
(計2回の説教演習では、以下の説教の基本構造に沿って完全原稿で作ることが求められました。)


■説教の基本構造
Introduction: 導入
Proposition: 提議
Main Point #1 主題1
 -Explanation: 説明 
 -Illustration:  例話 
 -Application: 適用
Main Point #2 主題2(説明-例話-適用)
Main Point #3 主題3(説明-例話-適用)
Conclusion: 結論



説教演習では上記の構造に沿って各部の完成度と全体の流れ、そして発音や姿勢など、かなり細かいポイントまで5段階評価される形となります。私の演習グループでは7人の学生が合計2回の説教演習をしましたが、多くの学生がバイブルカレッジ出身で、すでにユースパスタ―(青年担当牧師)であったりIVCFスタッフ経験者だったので、毎回の演習でかなり完成度の高いメッセージを聞くことができました。(演習ですが本番と同じ設定で行うので、語られる説教を通して時には涙することもありました) 各2回の演習は異なるジャンルの聖書箇所を選んで説教をするので、私は1回目はエペソ人への手紙1章15-23節、2回目は旧約の哀歌3章1-24節から説教を作らせて頂きました。この演習を通して、講義で学んだことを実践に落とし込んでいく作業を経験しましたが、講解説教(Expository Praching)を基礎に置きながらも、釈義(Exegesis)を通して、主題の抽出を行うので、実際の説教はかなり主題説教に似た作りになります。(演習の感想としては、釈義中心の説明型であれば、釈義に基づいたポイントを整理する流れになりますが、このスタイルの場合、主題の抽出とサブポイントの作りこみが結構大変で、かなり時間がかかりました)

※説教演習の評価シートです(かなり細かい評価項目に分かれています)


 














講義の中でHastings教授が4つの大切なコンテンツ(内容)について教えてくださいました。
1.聖書のみことばが語る声を聴けるように助けること
2.聴衆が持っている必要について思いやること  
3.信仰と日常生活のつながりに洞察を持つこと
4.個人の信仰の成長を促し、真理を語ることを励ますこと
聖書が語っている真理と教えに深い理解を得ることと、聞き手(聴衆)が直面している現実や課題に対して洞察する能力を得ていくことの両軸が、良い説教を語る基礎になっていくことを学ぶことができました。
 
現在インターンをしているバンクーバー日系人福音教会では、午後の青年向け礼拝にて説教の奉仕を始めさせて頂いています。この奉仕では、リージェントで学んだ講解説教のフレームワークを用いながら、教会に初めて来られた方にも理解できる説教を作るチャレンジを頂いています。
リージェントでの学びが丸2年終わった今、ようやく今まで学んできた一つ一つの授業の内容が、Preachingという形で統合されてくることを実感できています。3年目の学びでは、クリスチャンの霊性と旧約聖書について学んで行き、将来の牧会のための準備を更に進めていきたいと考えています。
 


























(Queen Elizabeth Parkの展望台から見たダウンタウンの景色です。やっと晴れる日が多くなってきました)

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