2013年12月21日土曜日

ユージーン・ピーターソンの特別講義

忙しかった秋学期も無事に終了し、4週間の冬休みに入りました。リージェントでの学びも3年目に入り、将来の働きに向けてのより専門的な学びが始まっています。リージェントカレッジには12人の名誉教授が在籍していますが、夏学期の短期講義や時折行われる特別講義で会うことが出来ます。この秋学期はユージーン・ピーターソン先生が寄付講座設立のためバンクーバーに来られたので、学生向けに特別講義をしてくださいました。


(※立って話しているのは学長のRod Wilson教授で本人は一番前の列の左から3人目です)
 
「The Message」(聖書翻訳の一つのバージョン)の著者であり、クリスチャンの霊性や牧会学の分野で多くの著作を持っておられる先生ですが、1993年から1998年まで霊性の神学の担当教授として教えておられました。牧会関係の授業では必ずと言っていいほど、課題図書として先生の著作を読んできたので、ぜひ直接講義を聞いてみたいと思っていました。
 
「将来牧師として働く上でぜひアドバイスを」という質問に対して、「教会のメンバーを神にある兄弟姉妹として接しなさい。決してルール違反を正すような警官(God's Policeman)のように振る舞ってはいけません。彼らを良く知るように努めなさい。最近は教会の人々の家に訪問する牧師が非常に少なくなってきています。牧師という仕事は「人々を良く知る」働きです。クリスチャン生活の全体が行動(Doing)に置かれるのではなく、共に生きる道を求めることが大切です。人の人生を変えることは5-6年ではできません。与えられた場所(教会)で責任を持ってしっかり会衆に仕えなさい。そのためにあなたに生き方と道を教える聖書のみことばからしっかり聞き、あなた自身に染みこませる(saturate)ようにしなさい」
 
牧師としてキャリアをスタートし、長年にわたって牧会に携わってきた経験からの言葉には重みがありました。ここではすべてを書ききれませんが、多くのことを学ぶことができました。「福音とは人としてこの世界に来られたイェス・キリスト自身であり、私たちは聖書を通して彼から聞き、見て、イメージし理解することができます。聖書の全てのことばに何か意味があります(Everyting means something)」 リージェントでいろいろな学びをしていますが、信仰そして福音の基本を改めて覚えさせられる機会となったと思います。
 
リージェント1年目の学び(Soul of Ministry)で課題図書として読んだ本がUnder the Unpredictable Plant an Exploration in Vocational Holinessでした。The Pastoral series (全4部)の3作目で、牧会の働きとは何か?深く教えられる本です。3年目の学びに入り、教会での奉仕を振り返りながら、この冬休みにもう一度読ませてもらっています。
 


 

 
 
 

2013年11月14日木曜日

英語が苦手でも海外の神学校に行けるのか(その2)

今からちょうど2年前のブログに英語の勉強についての記事を書かせて頂きましたが、もう少し詳しい話を出来たらと思い、前回の話題について少しアップデートをさせて頂きます。

ちなみに2010年4月から始めたTOEFLは18回受けることになりましたが、その詳細は以下の通りです。
















イフ外語学院のTOEFLコースを半年もすれば80点は超えるだろうという見積もりでしたが、リーディングがなかなか上がらずに60点後半をさまようことになり、途方にくれました。2/12に61点を取った時には、実はTOEFLの問題が根本的に読めていない、聴けていないということが分かり、抜本的な対策が必要となりました。その時に出会ったのがDeltaの教材とその教材を使ったWebラーニングでした。4分野あるTOEFLの勉強をすべて網羅的に対策を進めるのは非常に難しいので、まずリーディングで25点を超えることをめざし、その後にリスニングで25点を目指すことに決めました。2-3月まで単語の復習とリーディング対策、そして3-5月はリスニングの集中特訓を続けました。

リスニングは効果が出るまで本当に時間がかかる分野だと思います。シャドーイングが効果的だという意見もありますが、1.「完璧に100%シャドーイングする」のと2.「何となくシャドーイングできているつもり」の差は大きく、2を繰り返していてもなかなか伸びないのが現実だと思います。私の場合は「音声リピーティング」をひたすら1日3-4時間繰り返しました。

※「音声リピーティングの方法」
まず英語の本文と音声を用意します(私の場合はDeltaのテキストを使いました、オフィシャルガイドやBARRONSのテキストは実際の試験と比べても少し難易度が低いと思いました)
1.音声を聞いて、本文を見ながら1文ずつ正確な発音でリピーティングする
2.音声を聞いて、本文を見ることなく正確にリピーティングする
※最初は1文を丸ごとリピーティングするのは難しいと思います。
 正確にリピーティングできる文節数(3-4)に分けてリピーティングを繰り返します
3.意味や発音が不確かなところは本文を読んで確認する
これを1日3-4時間すると脳がくたくたになりますが、音声リピーティングを始めてから3ヵ月ほど経ったところで、TOEFLのリスニング問題が正確に解けるようになってきました。恐らく、いろいろな英語表現をキャッチできるレセプターが頭の中にできてきたのだと思います。
 
目標点数が90点だったので、スピーキングとライティングは最低限の対策しかせずに、目標まで到達しましたが(*2010年8月と2011年8月のライティングの点数は同じです)、もしこれが100点目標となると、スピーキングで23、ライティングで25以上を目指すことが必要になると思います。リージェントカレッジへは2011年9月入学が必須だったので、8月まで月2回ペースのTOEFL受験を続けることになりましたが、本来ならばもっと時間に余裕を持って3月くらいにはスコアを超えることが出来るようにしておくと、ビザの手続きも含め、十分な留学準備が出来ると思います。(ちなみにリージェント・カレッジの奨学金等の申し込みは9月入学の場合、2月あたりが締切なので、年内にTOEFLをクリアしておくと十分だと思います)
↓ 奨学金等の申し込み締め切りについての情報です
http://www.regent-college.edu/admissions-finance/financial-aid

2011年8月5日のテスト結果で90点を越えたときには、1年5ヶ月間続いたプレッシャーから開放され、心から主に感謝しました。この大変な勉強を祈りながら支えてくれた妻と家族、そして母教会のメンバーの方々にも本当に感謝します。その後、リージェントでの学びも途方もない勉強量に倒れそうになることが度々ありましたが、18回もTOEFLを受け続けた経験が、何とかぎりぎりのところで踏ん張れる力となっていると思います。

2013年11月4日月曜日

Faces of Jesus: Perspectives on Christology from the Global South

リージェント3年目の秋学期が始まってから早2カ月が過ぎました。この秋学期は夏からディスタンスコースで履修を続けている牧会倫理学に加え、旧約聖書学(IIIサムエル記)とキリスト論(演習)の合計3科目を受講しています。最初の2年間はMDiv(牧会修士)の必須科目を履修するので精一杯でしたが、3年目からは幅広い選択科目から将来の牧会に必要な科目を選んで勉強していくことが出来るので非常に楽しみです。

とりわけ今学期は特別にセミナー(演習)の授業を履修することにしました。演習は700番台のコースレベルに位置づけられていて、M.A.(文学修士)やTh.M(神学修士)の学生がそれぞれの専門分野を深めるための授業となります。今回、Diane Stinton先生の世界のキリスト論について一度勉強をしたかったので、学期前の抽選に応募したところ、運良く(いや、神さまの恵みにより)定員12名の枠に入ることが出来ました。このセミナー(演習)は英語名では「Seminar: Faces of Jesus: Perspectives on Christology from the Global South (演習:イェスの顔、西洋以外の世界から見たキリスト論)と言います。西洋以外のアフリカ・ラテンアメリカ・アジアのキリスト論について学ぶ授業で、全世界でイェス・キリストがどのように信仰されているのかを深く考察します。この授業の冒頭に担当教官が21世紀の世界におけるキリスト教が西洋を中心とした北半球から、アフリカ・ラテンアメリカ・アジアを中心とした南半球に中心を移してきていることを紹介してくださいました。例えばアフリカにおいては、1900年には1,000万人だったクリスチャン人口が2000年には約3.6億人に激増しています。そしてクリスチャンが増えている地域では、西洋(ヨーロッパや北アメリカ)から伝えられたキリスト教が各地域の文化や考え方に適用させている現実があります。もちろん、土着の宗教とキリスト教が混じってしまい習合する現象も起きていますが、うまく適用させているケースもあります。この授業では福音派神学の立場からそれらを評価し、理解を深めることを目的としています。

ちなみに授業の内容は以下のような感じで進んで行きます
1週目:イントロダクション
2週目:ラテンアメリカ
3週目:アフリカ
4週目:アジア
5週目:少数民族およびマイノリティ
6-9週目:学生による研究発表1(Research Paper)
 ※特定の地域を一つ選んで発表
10-11週目: 学生による研究発表2(Informal Christology)
 ※Paperとは異なる地域を一つ選んで発表
12週目:まとめ



なぜこの授業を履修したかったかというと、全世界に広がっているキリスト教の現実を知った上で、アジアという地域、とりわけ日本の現状について考察したいことと、世界の各地域に根差しているキリスト信仰から、将来日本での宣教をする上でのヒントや知恵を得たいという思いがあったからです。「イェス・キリストはご先祖様の兄弟(Brother Ancestor) or 元祖ご先祖様(Proto-Ancestor)」と位置付けるアフリカの一部のキリスト教諸派や、ラテンアメリカにおける聖霊派の急成長の土台となった「解放の神学」について考察することは非常にチャレンジングですが、自らの文化や育った背景と照らし合わせながら、考察を進めるのはとても良い訓練となっています。私個人のレポートの主題としては「日本のキリスト論」についてまとめる予定ですが、過去の歴史も辿りながら日本独自の仏教や神道から来る価値観をどのように理解するか、どうしたら習合(シンクレティズム)にならずに文化に適用させていくことができるか考察したいと思います。


















先日のハイキングで訪れたMunroLake(マンロー湖)の風景です





2013年6月8日土曜日

1年間のインターンシップを振り返って

2012年秋学期から2013年の冬学期にかけての8ヵ月間に渡って、リージェントMDiv(Master of Divinity)コースの必須科目であるSupervised Ministryを履修しました。リージェントカレッジのMDivは(1) Vocational discernment, (牧師としての招命の確認)と (2) Candidacy for the MDiv degree(牧会学修士号の候補者) の2段階に分かれていて、(1)から(2)に進むためには、所定のコースの終了と2名の牧師による推薦状、そしてMDivコミッティーの承認が必要になります。Supervised Ministryは主に(2)の段階に進んだ学生が奉仕教会においてインターンシップを経験する科目となります。既に以前のブログで内容について少し紹介をさせて頂きましたが、今回は振り返りも含めて書かせて頂きたいと思います。

必須科目なので、MDivコースで学ぶ学生は全員がこの授業を履修する必要がありますが、履修して良かったと思う点は
1.自分のミニストリーについてしっかり振り返る機会を持てた
2.スーパーバイザー(奉仕教会の牧師先生)との1対1のミーティングを持つ機会を持てた
3.小グループ(7名)のディスカッションを通して、いろいろなミニストリーのスタイルや考え方について学ぶことができた
という3点に集約できると思います。

1.については、Ministry Reflectionsといって、学生は2週間毎に自分の担当するミニストリーで起きた一つの出来事に対して、振り返りを書いて、小グループのメンバーに共有します。お題は自由ですが、「励まされたこと」、「問題となったこと」、「失敗したこと」について、振り返ることを通して、バランスのとれた理解と判断ができることになることを目標としています。特に「失敗したこと」や「アクシデント」について書くことは本当にチャレンジで、一つ一つのReflectionをまとめるのにとても時間がかかりました。この振り返りを通じて、「問題や課題、失敗に対していかに正直に向き合うか」ということについて学ぶことが出来たと思います。

2.については、2週間毎にインターン先の主任牧師と1時間から2時間にわたるミーティングを持ちました。基本的には、インターンシップで担当するミニストリーについての報告が中心ですが、このミーティングを通じて、一つ一つの課題に対してどのように取り組むべきか、丁寧に教えて頂くことができました。もちろん、スーパーバイザーとどれだけ時間を取れるかは、奉仕先の教会の状況に依存すると思いますが、常に第三者から客観的にミニストリーに対して評価、意見をもらうことはとても大切なことだと思います。そして何よりも、この定期的なコミュニケーションを持つことが、自分とって安心感を与え、ミニストリーに集中できることを知りました。

3.については、2週間毎の小グループによる、それぞれのミニストリーの報告、ケーススタディ、祈りの時間を通して多くの示唆をもらうことが出来ました。あるメンバーは1,000人規模の教会の弟子訓練の将来プランを作るというインターンを担当し、そして他のメンバーは自分の家族を通して、Missional Community(アウトリーチするための共同体)を立ち上げたり、そして70名を超える学生を対象としたミニストリーを担当するメンバーもいました。それぞれの与えられたミニストリーに献身的に仕える姿から励まされ、異なる立場や視点を共有することを通して、「宣教とは何か?」、「人との関わり方」、「コミュニティや教会への仕え方」について深く考える機会を得たと思います。約8ヵ月間に渡って、共に祈り、励まし合いながら時間を共有した仲間と、将来再会してそれぞれのミニストリーについて話し合う機会を持てることを楽しみにしています。

Supervised Ministryを受講している間は、インストラクターであるAnthony C. Brown師と個人的なオフィスアワーを持つこともできます。このオフィスアワーではインターンシップを通して洗い出されてくる個人的な課題について、直接相談することも出来ます。特に、ミニストリーに従事する者にとって、自分の感情とどのように向き合うかは大きな課題だと思います。いろいろな重圧やプレッシャーの中で奉仕をするときに、「喜び」や「励まされる」といったポジティブな感情だけではなく、「失望」や「落胆」、時には予想もしなかった「憤り」や「嫉妬」というネガティブな感情も出てきます。ビジネスの世界で働いていた時にはある程度割り切って、感情をコントロールすることを学んできましたが、教会の奉仕においては(特に牧師の立場では) それらの感情が自分の霊的な状態にダイレクトに関わってくるので慎重に取り扱う必要があることを覚えさせられています。(もちろん、霊的な状態に影響を及ぼさないように、感情を切り離したり、発散する訓練が必要だという意見もあると思いますが、私の今の見解では、自分の感情と真正面に向き合うことは『神にあって、自分を知る』大切なプロセスであると考えています) 2年間リージェントで学びを続けて、このインターンシップを通じてようやく自分の中の問題・課題について取り組みを始めることができることを主に感謝します。オフィスアワーの中で、ブラウン師が「牧会をするにはPassion(情熱・熱心さ)も必要だが、それ以上にThoughtful(思慮深く、良く考える)であることが必要です。そして、Thoughtfulであるためには健全なTheology(神学)が必要になってくるでしょう」とアドバイスを下さいました。

私が学んでいるMDivコースは2013年度から新カリキュラムへ移行します。Supervised Ministryは従来の2ターム8ヶ月間(3単位)から、4タームの16ヵ月間(6単位)に変更となります。新カリキュラムではより長い期間ミニストリーに関わり、振り返りの時間を持つことになりますが、旧カリキュラムで学んでいる学生は今年からSupervised Ministry IIを受講することができるので、この秋も引き続き履修することを検討しています。リージェントでの勉強と同時に教会での奉仕を両立させるのは大変ですが、将来の準備としてしっかり学んで行きたいと思います。


















(ちょっと前の写真ですが、冬のバンクーバーは30分程車を走らせると雪山に行くことができます)

2013年6月4日火曜日

Preachingについて

前回の更新からかなり時間が経過してしまいましたが、4月に忙しい冬学期が終わってから、5月にバンクーバーで長男が生まれ、出産準備から手続きなどでバタバタする毎日が続きました。最近やっと落ち着いてきたので、冬学期に学んだことをまとめていきたいと思います。

リージェント2年目の冬学期はPreaching&Worshipコースを履修しました。この授業は毎週3時間の講義と1時間半の説教演習がセットになっていて、学生は2回の説教を演習の中で経験することになります。コースの教官はRoss Hastings教授で、自身2,000人規模の教会の主任牧師としての経験と説教についてのフレームワークをを共有してくださいました。さらにリージェントの先生方がゲストスピーカーとなり、各書簡をどのように釈義し、説教するか学ぶことができるのが特徴です。テキストはJames S. Stewartの「Heralds of God」とDarrell W. Johnsonの「The Glory of Preaching」を読み、ブックレポートにまとめました。
 
講義では初めに説教についてのフレームワークを学びましたが、一番印象に残ったのは「Memory Retantion Hierarchy(記憶維持の階層)」についての説明でした。聴衆(メッセージを聞く)側の立場に立つと、話し方のパターンに応じた記憶への残り方に順序があり、説教のストラクチャー(構造)は主題となるメッセージをいかに伝え、聴衆の記憶に残るように配慮することが求められることになります。

ちなみにその順番ですが、
(1)Ethos(主題)
(2)Concluding illustration(結論の例話)
(3)Introductory illustration(導入の例話)
(4)Main Point Illustration(主題の例話)
(5)Application(適用)
(6)Telling Phrase(効果的な文句)
(7)Explanations(説明)
となっています。

一番最後に「説明部」が来ているのが興味深く、説教者としては聖書のみことばを釈義に基づき、どのように説明するか、適用するかに注目しがちだと思いますが、この階層によると、聴衆の記憶に残るのは説明部よりも例話であることが分かります。そして、説教としての基本的な構造(ストラクチャー)はこの階層を踏まえた流れで作りこむことになります。
(計2回の説教演習では、以下の説教の基本構造に沿って完全原稿で作ることが求められました。)


■説教の基本構造
Introduction: 導入
Proposition: 提議
Main Point #1 主題1
 -Explanation: 説明 
 -Illustration:  例話 
 -Application: 適用
Main Point #2 主題2(説明-例話-適用)
Main Point #3 主題3(説明-例話-適用)
Conclusion: 結論



説教演習では上記の構造に沿って各部の完成度と全体の流れ、そして発音や姿勢など、かなり細かいポイントまで5段階評価される形となります。私の演習グループでは7人の学生が合計2回の説教演習をしましたが、多くの学生がバイブルカレッジ出身で、すでにユースパスタ―(青年担当牧師)であったりIVCFスタッフ経験者だったので、毎回の演習でかなり完成度の高いメッセージを聞くことができました。(演習ですが本番と同じ設定で行うので、語られる説教を通して時には涙することもありました) 各2回の演習は異なるジャンルの聖書箇所を選んで説教をするので、私は1回目はエペソ人への手紙1章15-23節、2回目は旧約の哀歌3章1-24節から説教を作らせて頂きました。この演習を通して、講義で学んだことを実践に落とし込んでいく作業を経験しましたが、講解説教(Expository Praching)を基礎に置きながらも、釈義(Exegesis)を通して、主題の抽出を行うので、実際の説教はかなり主題説教に似た作りになります。(演習の感想としては、釈義中心の説明型であれば、釈義に基づいたポイントを整理する流れになりますが、このスタイルの場合、主題の抽出とサブポイントの作りこみが結構大変で、かなり時間がかかりました)

※説教演習の評価シートです(かなり細かい評価項目に分かれています)


 














講義の中でHastings教授が4つの大切なコンテンツ(内容)について教えてくださいました。
1.聖書のみことばが語る声を聴けるように助けること
2.聴衆が持っている必要について思いやること  
3.信仰と日常生活のつながりに洞察を持つこと
4.個人の信仰の成長を促し、真理を語ることを励ますこと
聖書が語っている真理と教えに深い理解を得ることと、聞き手(聴衆)が直面している現実や課題に対して洞察する能力を得ていくことの両軸が、良い説教を語る基礎になっていくことを学ぶことができました。
 
現在インターンをしているバンクーバー日系人福音教会では、午後の青年向け礼拝にて説教の奉仕を始めさせて頂いています。この奉仕では、リージェントで学んだ講解説教のフレームワークを用いながら、教会に初めて来られた方にも理解できる説教を作るチャレンジを頂いています。
リージェントでの学びが丸2年終わった今、ようやく今まで学んできた一つ一つの授業の内容が、Preachingという形で統合されてくることを実感できています。3年目の学びでは、クリスチャンの霊性と旧約聖書について学んで行き、将来の牧会のための準備を更に進めていきたいと考えています。
 


























(Queen Elizabeth Parkの展望台から見たダウンタウンの景色です。やっと晴れる日が多くなってきました)

2013年1月8日火曜日

Hermeneutics&Criticism(聖書解釈・批評学)

冬学期(Winter Term)まであと一週間で、家族とゆっくりしながら、片手間に来学期のリーディングも少し始めながら過ごしています。秋学期はリージェントの授業の中でも難しい部類に入るといわれるHermeneutics and Criticismを履修しました。担当教官はIain Provan教授で、旧約学のエキスパートです。授業の中身は近代聖書批評をSource CriticismからPost-Structuralismまで、そして現代の批評学を学んだ後に、1982年の聖書解釈におけるシカゴ声明の批評を行うというものです。ネイティブの学生でも難関で相当苦労する理由は、授業の採点方法にあり、毎週各批評学のリーディングレポートを800wordsにまとめて提出し、そのレポートの評価が50%、そして期末の論文の評価が50%となっています。その中でもリーディングレポートの採点が非常に厳しく、ポイントを外していると減点対象となるので、全く気の抜けないリーディングが続きました。おそらく60人ぐらい履修している学生のうち、リーディングレポートがA評価だったのはたったの1人で、私のようなESLの学生にとってはBが取れたらひと安心、B+だったら大喜びという感じでした。

この授業の醍醐味は、福音的なクリスチャンとして近代から現代にわたる聖書批評・解釈をどのように理解すべきか?深く考察できるところにあります。授業の前半は各聖書批評のポイントをまとめ、後半に実際に具体的な聖書箇所(旧約・新約両方)を用いて、その批評を適用するという流れです。時にはユーモアを混ぜながら、自身のアカデミックな世界での経験(批評者とのディスカッションなど)を例にしながら、学者として、そして信仰者としてのあるべき理解を分かりやすく説明してくださいました。毎週のリーディングレポートは大変でしたが、授業を理解するためには欠かせないものであり、とことん読ませるリージェントスタイルを十分に味わえる授業でした。期末のレポートはシカゴ声明についての総合批評を行うという、非常に大きなテーマを取り扱うもので、こちらもまとめるのが大変な内容でした。このレポートを通して、30年前に福音主義の神学校教授陣がなぜこの声明を作るに至ったかかのプロセスを知り、聖書の無謬性と無誤性の違い、無誤性の立場を取りながらどのように近代批評に対して説明をするのか、知ることができました。日本の福音主義教会にも聖書信仰として認められているシカゴ声明ですが、ジェームス・パッカー教授ブルース・ウォルトキ教授といったリージェントカレッジの先生方がその成立に深く関わっていて、現在に至るまでの聖書信仰を守るための取り組みと流れを学ぶことができました。

レポートをまとめる段階で、誰でもサインアップできるオフィスアワーを利用して、Provan教授に個人的なチュートリアルの時間を頂き、レポートのアウトラインの確認と、先生の授業に対する考えをゆっくり聞く機会を持つことができました。「私たちの生きている世界は、これからポストモダンの傾向がもっと進んで行くだろうし、だれもその時計の針をもどすことはできない」というコメントがとても印象的でしたが、福音的な立場を取りながらクリスチャンとして聖書をこの世界に解き明かしていくことの責任を改めて覚えさせられる機会となりました。 



















(アムトラックからカスケード山脈の一部が見えました)