2013年1月8日火曜日

Hermeneutics&Criticism(聖書解釈・批評学)

冬学期(Winter Term)まであと一週間で、家族とゆっくりしながら、片手間に来学期のリーディングも少し始めながら過ごしています。秋学期はリージェントの授業の中でも難しい部類に入るといわれるHermeneutics and Criticismを履修しました。担当教官はIain Provan教授で、旧約学のエキスパートです。授業の中身は近代聖書批評をSource CriticismからPost-Structuralismまで、そして現代の批評学を学んだ後に、1982年の聖書解釈におけるシカゴ声明の批評を行うというものです。ネイティブの学生でも難関で相当苦労する理由は、授業の採点方法にあり、毎週各批評学のリーディングレポートを800wordsにまとめて提出し、そのレポートの評価が50%、そして期末の論文の評価が50%となっています。その中でもリーディングレポートの採点が非常に厳しく、ポイントを外していると減点対象となるので、全く気の抜けないリーディングが続きました。おそらく60人ぐらい履修している学生のうち、リーディングレポートがA評価だったのはたったの1人で、私のようなESLの学生にとってはBが取れたらひと安心、B+だったら大喜びという感じでした。

この授業の醍醐味は、福音的なクリスチャンとして近代から現代にわたる聖書批評・解釈をどのように理解すべきか?深く考察できるところにあります。授業の前半は各聖書批評のポイントをまとめ、後半に実際に具体的な聖書箇所(旧約・新約両方)を用いて、その批評を適用するという流れです。時にはユーモアを混ぜながら、自身のアカデミックな世界での経験(批評者とのディスカッションなど)を例にしながら、学者として、そして信仰者としてのあるべき理解を分かりやすく説明してくださいました。毎週のリーディングレポートは大変でしたが、授業を理解するためには欠かせないものであり、とことん読ませるリージェントスタイルを十分に味わえる授業でした。期末のレポートはシカゴ声明についての総合批評を行うという、非常に大きなテーマを取り扱うもので、こちらもまとめるのが大変な内容でした。このレポートを通して、30年前に福音主義の神学校教授陣がなぜこの声明を作るに至ったかかのプロセスを知り、聖書の無謬性と無誤性の違い、無誤性の立場を取りながらどのように近代批評に対して説明をするのか、知ることができました。日本の福音主義教会にも聖書信仰として認められているシカゴ声明ですが、ジェームス・パッカー教授ブルース・ウォルトキ教授といったリージェントカレッジの先生方がその成立に深く関わっていて、現在に至るまでの聖書信仰を守るための取り組みと流れを学ぶことができました。

レポートをまとめる段階で、誰でもサインアップできるオフィスアワーを利用して、Provan教授に個人的なチュートリアルの時間を頂き、レポートのアウトラインの確認と、先生の授業に対する考えをゆっくり聞く機会を持つことができました。「私たちの生きている世界は、これからポストモダンの傾向がもっと進んで行くだろうし、だれもその時計の針をもどすことはできない」というコメントがとても印象的でしたが、福音的な立場を取りながらクリスチャンとして聖書をこの世界に解き明かしていくことの責任を改めて覚えさせられる機会となりました。 



















(アムトラックからカスケード山脈の一部が見えました)