2013年6月8日土曜日

1年間のインターンシップを振り返って

2012年秋学期から2013年の冬学期にかけての8ヵ月間に渡って、リージェントMDiv(Master of Divinity)コースの必須科目であるSupervised Ministryを履修しました。リージェントカレッジのMDivは(1) Vocational discernment, (牧師としての招命の確認)と (2) Candidacy for the MDiv degree(牧会学修士号の候補者) の2段階に分かれていて、(1)から(2)に進むためには、所定のコースの終了と2名の牧師による推薦状、そしてMDivコミッティーの承認が必要になります。Supervised Ministryは主に(2)の段階に進んだ学生が奉仕教会においてインターンシップを経験する科目となります。既に以前のブログで内容について少し紹介をさせて頂きましたが、今回は振り返りも含めて書かせて頂きたいと思います。

必須科目なので、MDivコースで学ぶ学生は全員がこの授業を履修する必要がありますが、履修して良かったと思う点は
1.自分のミニストリーについてしっかり振り返る機会を持てた
2.スーパーバイザー(奉仕教会の牧師先生)との1対1のミーティングを持つ機会を持てた
3.小グループ(7名)のディスカッションを通して、いろいろなミニストリーのスタイルや考え方について学ぶことができた
という3点に集約できると思います。

1.については、Ministry Reflectionsといって、学生は2週間毎に自分の担当するミニストリーで起きた一つの出来事に対して、振り返りを書いて、小グループのメンバーに共有します。お題は自由ですが、「励まされたこと」、「問題となったこと」、「失敗したこと」について、振り返ることを通して、バランスのとれた理解と判断ができることになることを目標としています。特に「失敗したこと」や「アクシデント」について書くことは本当にチャレンジで、一つ一つのReflectionをまとめるのにとても時間がかかりました。この振り返りを通じて、「問題や課題、失敗に対していかに正直に向き合うか」ということについて学ぶことが出来たと思います。

2.については、2週間毎にインターン先の主任牧師と1時間から2時間にわたるミーティングを持ちました。基本的には、インターンシップで担当するミニストリーについての報告が中心ですが、このミーティングを通じて、一つ一つの課題に対してどのように取り組むべきか、丁寧に教えて頂くことができました。もちろん、スーパーバイザーとどれだけ時間を取れるかは、奉仕先の教会の状況に依存すると思いますが、常に第三者から客観的にミニストリーに対して評価、意見をもらうことはとても大切なことだと思います。そして何よりも、この定期的なコミュニケーションを持つことが、自分とって安心感を与え、ミニストリーに集中できることを知りました。

3.については、2週間毎の小グループによる、それぞれのミニストリーの報告、ケーススタディ、祈りの時間を通して多くの示唆をもらうことが出来ました。あるメンバーは1,000人規模の教会の弟子訓練の将来プランを作るというインターンを担当し、そして他のメンバーは自分の家族を通して、Missional Community(アウトリーチするための共同体)を立ち上げたり、そして70名を超える学生を対象としたミニストリーを担当するメンバーもいました。それぞれの与えられたミニストリーに献身的に仕える姿から励まされ、異なる立場や視点を共有することを通して、「宣教とは何か?」、「人との関わり方」、「コミュニティや教会への仕え方」について深く考える機会を得たと思います。約8ヵ月間に渡って、共に祈り、励まし合いながら時間を共有した仲間と、将来再会してそれぞれのミニストリーについて話し合う機会を持てることを楽しみにしています。

Supervised Ministryを受講している間は、インストラクターであるAnthony C. Brown師と個人的なオフィスアワーを持つこともできます。このオフィスアワーではインターンシップを通して洗い出されてくる個人的な課題について、直接相談することも出来ます。特に、ミニストリーに従事する者にとって、自分の感情とどのように向き合うかは大きな課題だと思います。いろいろな重圧やプレッシャーの中で奉仕をするときに、「喜び」や「励まされる」といったポジティブな感情だけではなく、「失望」や「落胆」、時には予想もしなかった「憤り」や「嫉妬」というネガティブな感情も出てきます。ビジネスの世界で働いていた時にはある程度割り切って、感情をコントロールすることを学んできましたが、教会の奉仕においては(特に牧師の立場では) それらの感情が自分の霊的な状態にダイレクトに関わってくるので慎重に取り扱う必要があることを覚えさせられています。(もちろん、霊的な状態に影響を及ぼさないように、感情を切り離したり、発散する訓練が必要だという意見もあると思いますが、私の今の見解では、自分の感情と真正面に向き合うことは『神にあって、自分を知る』大切なプロセスであると考えています) 2年間リージェントで学びを続けて、このインターンシップを通じてようやく自分の中の問題・課題について取り組みを始めることができることを主に感謝します。オフィスアワーの中で、ブラウン師が「牧会をするにはPassion(情熱・熱心さ)も必要だが、それ以上にThoughtful(思慮深く、良く考える)であることが必要です。そして、Thoughtfulであるためには健全なTheology(神学)が必要になってくるでしょう」とアドバイスを下さいました。

私が学んでいるMDivコースは2013年度から新カリキュラムへ移行します。Supervised Ministryは従来の2ターム8ヶ月間(3単位)から、4タームの16ヵ月間(6単位)に変更となります。新カリキュラムではより長い期間ミニストリーに関わり、振り返りの時間を持つことになりますが、旧カリキュラムで学んでいる学生は今年からSupervised Ministry IIを受講することができるので、この秋も引き続き履修することを検討しています。リージェントでの勉強と同時に教会での奉仕を両立させるのは大変ですが、将来の準備としてしっかり学んで行きたいと思います。


















(ちょっと前の写真ですが、冬のバンクーバーは30分程車を走らせると雪山に行くことができます)

2013年6月4日火曜日

Preachingについて

前回の更新からかなり時間が経過してしまいましたが、4月に忙しい冬学期が終わってから、5月にバンクーバーで長男が生まれ、出産準備から手続きなどでバタバタする毎日が続きました。最近やっと落ち着いてきたので、冬学期に学んだことをまとめていきたいと思います。

リージェント2年目の冬学期はPreaching&Worshipコースを履修しました。この授業は毎週3時間の講義と1時間半の説教演習がセットになっていて、学生は2回の説教を演習の中で経験することになります。コースの教官はRoss Hastings教授で、自身2,000人規模の教会の主任牧師としての経験と説教についてのフレームワークをを共有してくださいました。さらにリージェントの先生方がゲストスピーカーとなり、各書簡をどのように釈義し、説教するか学ぶことができるのが特徴です。テキストはJames S. Stewartの「Heralds of God」とDarrell W. Johnsonの「The Glory of Preaching」を読み、ブックレポートにまとめました。
 
講義では初めに説教についてのフレームワークを学びましたが、一番印象に残ったのは「Memory Retantion Hierarchy(記憶維持の階層)」についての説明でした。聴衆(メッセージを聞く)側の立場に立つと、話し方のパターンに応じた記憶への残り方に順序があり、説教のストラクチャー(構造)は主題となるメッセージをいかに伝え、聴衆の記憶に残るように配慮することが求められることになります。

ちなみにその順番ですが、
(1)Ethos(主題)
(2)Concluding illustration(結論の例話)
(3)Introductory illustration(導入の例話)
(4)Main Point Illustration(主題の例話)
(5)Application(適用)
(6)Telling Phrase(効果的な文句)
(7)Explanations(説明)
となっています。

一番最後に「説明部」が来ているのが興味深く、説教者としては聖書のみことばを釈義に基づき、どのように説明するか、適用するかに注目しがちだと思いますが、この階層によると、聴衆の記憶に残るのは説明部よりも例話であることが分かります。そして、説教としての基本的な構造(ストラクチャー)はこの階層を踏まえた流れで作りこむことになります。
(計2回の説教演習では、以下の説教の基本構造に沿って完全原稿で作ることが求められました。)


■説教の基本構造
Introduction: 導入
Proposition: 提議
Main Point #1 主題1
 -Explanation: 説明 
 -Illustration:  例話 
 -Application: 適用
Main Point #2 主題2(説明-例話-適用)
Main Point #3 主題3(説明-例話-適用)
Conclusion: 結論



説教演習では上記の構造に沿って各部の完成度と全体の流れ、そして発音や姿勢など、かなり細かいポイントまで5段階評価される形となります。私の演習グループでは7人の学生が合計2回の説教演習をしましたが、多くの学生がバイブルカレッジ出身で、すでにユースパスタ―(青年担当牧師)であったりIVCFスタッフ経験者だったので、毎回の演習でかなり完成度の高いメッセージを聞くことができました。(演習ですが本番と同じ設定で行うので、語られる説教を通して時には涙することもありました) 各2回の演習は異なるジャンルの聖書箇所を選んで説教をするので、私は1回目はエペソ人への手紙1章15-23節、2回目は旧約の哀歌3章1-24節から説教を作らせて頂きました。この演習を通して、講義で学んだことを実践に落とし込んでいく作業を経験しましたが、講解説教(Expository Praching)を基礎に置きながらも、釈義(Exegesis)を通して、主題の抽出を行うので、実際の説教はかなり主題説教に似た作りになります。(演習の感想としては、釈義中心の説明型であれば、釈義に基づいたポイントを整理する流れになりますが、このスタイルの場合、主題の抽出とサブポイントの作りこみが結構大変で、かなり時間がかかりました)

※説教演習の評価シートです(かなり細かい評価項目に分かれています)


 














講義の中でHastings教授が4つの大切なコンテンツ(内容)について教えてくださいました。
1.聖書のみことばが語る声を聴けるように助けること
2.聴衆が持っている必要について思いやること  
3.信仰と日常生活のつながりに洞察を持つこと
4.個人の信仰の成長を促し、真理を語ることを励ますこと
聖書が語っている真理と教えに深い理解を得ることと、聞き手(聴衆)が直面している現実や課題に対して洞察する能力を得ていくことの両軸が、良い説教を語る基礎になっていくことを学ぶことができました。
 
現在インターンをしているバンクーバー日系人福音教会では、午後の青年向け礼拝にて説教の奉仕を始めさせて頂いています。この奉仕では、リージェントで学んだ講解説教のフレームワークを用いながら、教会に初めて来られた方にも理解できる説教を作るチャレンジを頂いています。
リージェントでの学びが丸2年終わった今、ようやく今まで学んできた一つ一つの授業の内容が、Preachingという形で統合されてくることを実感できています。3年目の学びでは、クリスチャンの霊性と旧約聖書について学んで行き、将来の牧会のための準備を更に進めていきたいと考えています。
 


























(Queen Elizabeth Parkの展望台から見たダウンタウンの景色です。やっと晴れる日が多くなってきました)